この蔵は、今も変わっている。
2025BY、協会酵母を卒業しました。
受け継いだ蔵で、酒造りを磨き直す。
私たちは今、第二創業期を歩んでいます。
目指す味わいへ、まだ道の途中。
今、行っていることと、これからのことを。

一杯の始まりに、
小さな発酵がある。
日本酒のアルコールを生むのは、酵母の発酵。その酵母が健やかに働くための小さな仕込みが「酒母」です。
私たちは、蔵の乳酸菌の働きで酒母を酸性にする「生酛」を選んでいます。酵母を培養して戻すのは、最初の1本だけ。それ以降の酒母には、培養酵母を加えていません。
発酵の始まりを、蔵の環境と微生物の働きから考える。それが、藤井酒造の「環境発酵」です。
授かる酒母。
育てる醪。
造りを変えても、大切にする二つの役割があります。
授かる
微生物が健やかに働ける環境を整える。
発酵が生まれる力を、蔵から受け取る。
育てる
受け取った発酵に、人の技術を尽くす。
個性を生かし、美しくエレガントな酒へ。
健やかな始まりを、
迎えるために。
米と麹を準備し、道具を整え、温度や衛生に目を配る。香りや泡、数値から、発酵の様子を読み取る。
「授かる」ためには、人の仕事が欠かせません。微生物が働ける条件を整え、酒母の健やかな立ち上がりを支えます。

培養酵母を加えるのは、
最初の1本だけ。
蔵から分離した酵母を戻す
蔵の酒母から分離した酵母を培養し、最初の1本に加えています。
培養酵母を加えない
毎回酵母を加えることはせず、蔵の環境を整え、発酵の立ち上がりを支えます。
乳酸菌は添加していません。協会酵母も使っていません。
最初の1本も、培養酵母を戻す助けなしで立ち上がること。蔵の乳酸菌と酵母が働く環境を育み、その営みを次へつないでいきたいと考えています。

生まれた個性を、
美しい一杯へ。
酒母に米・麹・水を加え、醪へ。ここからは、受け取った発酵の力を、目指す味わいへと育てていきます。
- 読む香り、泡、味わい、分析値から、その日の状態を確かめる。
- 整える発酵の進み方に応じて温度などを調整し、酸と旨みのバランスを探る。
- 仕上げる搾り、火入れ、貯蔵まで、一杯になったときの美しさを考える。
年ごと、仕込みごとの違いを読みながら、飲む人に届く味わいに責任を持つ。それが、私たちの「育てる」です。
厚みを残し、
重さをほどく。
酸と旨みの重なりは、龍勢の大切な個性です。その厚みを残しながら、もっと軽やかに飲み進められる酒へ。
仕込みごとの違いに向き合い、狙う味わいへ安定して整えることも、今の課題です。蔵から分離した酵母と向き合う中で、さまざまな調整を試してきました。
酸との、向き合い方。
踊りや醪の温度を見直し、酸の出方と味わいのバランスを探ってきました。
仕事の細部から。
麹づくりでの手袋や着替えも見直す。発酵を支える作業環境から、確かめ直しています。
一杯の調和へ。
割り水をせず原酒で仕上げ、味わいの調和を探る。火入れ後の急冷も、既存設備でできる方法を模索してきました。
今の龍勢を、完成形とは考えていません。
変化する味わいも、その時々の一杯で感じていただけたらうれしく思います。
酒造りを知る、
四つの入口。
気になるところから、お読みください。
生酛と速醸は、どう違う?
どちらも、酵母が働きやすい酸性の環境をつくる方法です。生酛は乳酸菌がつくる乳酸を生かし、速醸は醸造用の乳酸を加えます。
生酛でも、あらかじめ培養した乳酸菌を加える蔵があります。同じ生酛でも、乳酸菌をどこから得るかには、蔵ごとの選択があります。
藤井酒造は全量生酛で、乳酸菌は添加していません。蔵の環境の中で育つ乳酸菌が働ける条件を整え、その力で酒母を酸性にしていきます。発酵を始める力を、この場所で育み、受け継いでいくことを大切にしています。
酵母をどこから得るかも、また別の選択です。生酛でも協会酵母を使う造りはあります。藤井酒造が培養した酵母を加えるのは最初の1本だけで、2本目以降の酒母には加えていません。
環境発酵では、何を管理する?
温度、湿度、衛生、道具や作業の状態、そして微生物の働きを見ています。ここでいう「菌層」は、乳酸菌や酵母だけでなく、そこにいる微生物と、その関係を含む言葉です。
人がすべてを指定する発想から、環境を整えて働きを支える発想へ。日々の観察と調整を重ねながら、酒造り全体の安全と品質を担います。
「農業的」「文化的」な酒造りとは?
土や季節を読み、育つ条件を整える農業のように、蔵の環境と発酵の関係を育む。その姿勢を、私たちは「農業的」と捉えています。
また、発酵を始める力を蔵で育み、次の仕込みへつなぐ方向を「文化的」、外から供給される酵母や乳酸などの力を組み合わせる方向を「文明的」と整理しています。これは藤井酒造の酒造りを考えるための視点で、他の造りの優劣を示す分類ではありません。
酵母は、毎回加えている?
蔵の酒母から分離・培養した酵母を加えるのは、最初の1本だけです。2本目以降の酒母には、培養酵母を加えていません。
目指しているのは、この最初の1本も、培養酵母を戻す助けなしで立ち上がること。そのために、蔵の微生物が健やかに働く環境を育んでいます。
この蔵を、龍勢の一杯で。
料理と合わせ、温度を変えながら。
酸と旨み、余韻の表情をお楽しみください。


